2008年08月09日
闇の子供たち

「闇の子供たち」は「血と骨」等で知られる梁石日の原作。
タイの裏社会で日常的に行なわれている幼児売買春・人身売買という衝撃的な内容に、阪本順治が映画化。
臓器売買という非人道的な問題、また子どもたちを救おうとする新聞記者やNGO職員などの日本人たちが辿る、それぞれの運命を描いています。
思わず目を背けたくなる程の描写が多く、観ているのが苦痛にすら感じますが、逃げずに受け止めて考える事を観る側にも要求していると、私は思いました。
勿論この映画はフィクションですが、同じような出来事は現実に起きている。「これが現実で、我々が知らないだけだ。」といった台詞が、重く胸にのしかかります。
阪本順治は本当に真面目で誠実な方なのだと思います。
色んなテーマの作品を手がけていますが、決してその作品を作る意味・伝えるべき事から逃げずに立ち向い、切り込んでいく。
その強さが阪本作品の大きな魅力であり、私は彼の映画をできるだけ観続けたいと思うのです。

・闇の子供たち@映画生活
2008年07月16日
クライマーズ・ハイ

「クライマーズ・ハイ」は横山秀夫の同名小説が原作。
1985年の日航機墜落事故取材を巡って奔走する地元の新聞記者たちの姿を描いています。
NHKのドラマ版がなかなかの出来だっただけに、この映画版と比較しがちですが、こちらも素晴らしい出来でした。
未曾有の大事故を前に、どこまで真実を伝えられるのか。
妬みや苛立ちが飛び交い、混乱する社内、加熱していく報道合戦の緊張感。
そんな中でも新聞記者としての使命感と正義感を貫こうとする記者たちの姿は、映画を観た後も深く心に残ります。
主演の堤真一も良いですが、私は事故現場を取材する記者を演じた堺雅人の熱演がとりわけ良かったです。
特に事故の犠牲者が残したメモを読むシーンは感動的。落ち着いていながらも、熱さを感じさせる声のトーンが素晴らしい。ジーンと来ました。
★「クライマーズ・ハイ」公式サイト
・クライマーズ・ハイ@映画生活
2007年05月31日
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習

ザフスタン国営テレビの看板レポーター、ボラット。国の情報省の命令で、アメリカ文化を学ぶため渡米。NYへとやってきますが、彼は人気TVドラマの美人女優パメラにひと目ぼれ。車を買い、彼女が住むカリフォルニアへと向かいますが…。
ユダヤ系英国人のサシャ・バロン・コーエン主演の超低俗で悪趣味なおバカムービー。
真面目な性格の方は決して観てはいけない映画です。下手に薦めると今までの関係が一気に崩壊する恐れアリですよ!
私も観ていて正直ドン引きした場面もありました。ちょっと怒ったりもしました。DVDで観ていたら、おそらく途中で止めたでしょう。
しかし…!観終わった後しばらくして、猛烈に悔しくなりました。
観ていた私の方がバカだと気づいたからです!
お釈迦様の手の上の孫悟空のような気分ですよ!
もう1回観たい。観終わった直後はこんな映画2度と観るもんか!と思っていたのに…やられました。
映画でさんざん暴走しまくりのボラットですが、関連サイトでのサシャ・バロン・コーエンの紹介記事に驚愕!
これがあのボラット役の人?!と疑うくらい、めっちゃインテリでダンディーで男前なのですよ。
すごい…ゴールデン・グローブ主演男優賞も納得ですね。
★「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」公式サイト
★シネマトゥデイ「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習」特集
・ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習@映画生活
2007年05月15日
ツォツィ

アパルトヘイトの爪跡が今も残る、南アフリカ・ヨハネスブルグのスラム街。
ツォツィ(不良)と呼ばれるひとりの少年は、仲間とつるんで窃盗を繰り返し、その日を生き延びています。
ある日、盗んだ車の中にいた生後数ヶ月の赤ん坊を発見します。
その小さな命と向き合うことで、ツォツィは、見失っていた「生きること」の意味を見出していくのですが…。
アパルトヘイト廃止から10余年。今も続く南アフリカの過酷な現実。
他人から略奪し、傷つけることでしか生きてゆけなかったツォツィが、赤ん坊との出会いをきっかけに、初めて人に与える喜びを知り、生きる希望を取り戻していきます。
最初は氷のように冷淡だった表情が、穏やかで優しく変わっていくのを見ているうちに、この映画の中だけではない現実の世界の「ツォツィ」達のことを思い、とても切なく、悲しくなりました。
最初から悪人なんて、この世界にはいないのです。
でも、生まれ育った環境や受ける教育や愛情によって人間は、天使のようにも優しく、悪魔のように残忍にも変わってしまうのですね…。
映画のラストは決してハッピーエンドではありません。けれどもその先には、救いと希望が必ずある筈だと、私は信じたいです。
★「ツォツィ」公式サイト
・ツォツィ@映画生活
2007年05月01日
バベル

「バベル」は、一発の銃弾をきっかけに、モロッコ、アメリカとメキシコ、日本でそれぞれの物語が同時進行していく映画です。
菊地凛子のアカデミー助演女優賞ノミネートや、劇中のシーンで観客が体調不良を訴えるなど、何かと話題に事欠かないこの作品。
私は今朝9時の回で観ましたが、地元のシネコンでもほぼ満員で、この映画への注目度の高さや期待の大きさを実感しました。
しかし、この映画の内容、結構重い…。
残酷なシーンもそれほど多くはないのですが、登場人物の行動が愚かで、経過や心理状態も痛々しく、観ていて悲しく辛い気持ちになります。
けれども、言語や人種を超えた世界観に圧倒される作品でした。
劇中に出てくる言葉ー
「私たちは悪いことはしていないのよ。ただ、愚かなことをしてしまった」。
この言葉に、映画のすべてが凝縮されていると思います。
【追記】
「バベル」を観たと話すと、みんな一様に「気持ち悪くならなかった?」と聞きます(笑)。
私は後方の席で観たのと、こういうシーンに割と強いのか、ジッと観ていても平気でした。
でも、体調があまり良くない時に観ると乗り物酔いみたいな感じになるかも知れませんね。
(アトラクションか!)
私はそれよりも、映画前半に出てくる菊池凛子の問題のシーンに結構動揺しました。
あのシーンを前方で観るのはちょっとキツイ気が…。
★「バベル」公式サイト
・バベル@映画生活
2007年04月09日
ブラッド・ダイヤモンド

狂気と混乱が支配する内戦下のアフリカ。
見たこともないほど巨大なピンクダイアモンドをめぐり主人公たち三者三様の思惑が交錯する、サスペンスフルな展開の衝撃作です。
レオナルド・ディカプリオ、ジャイモン・フンスー、ジェニファー・コネリー。主演の3人がとてもリアルな、素晴らしい演技をしています。
特にディカプリオ。「タイタニック」以来、友達とオチョクリのネタにして遊んでいたことを反省…。
体張っています!!キナ臭い感じと、最後に見せる誠実さ。骨太な大人のイイ男になっていました。
最近「ラストキング・オブ・スコットランド」など、アフリカを舞台にした映画が多く作られています。
この背景には、先進国がこの悲惨な状況を作り出してきたという、贖罪の気持ちが込められているのでしょうか…。
最後まで一体どうなってしまうのかわからない展開。早く映画が終わってくれないかと思う程、ドキドキしました。
「ラストキング〜」は心理的にゾッとする恐怖のある作品でしたが、「ブラッド・ダイヤモンド」では目を覆いたくなるような、残酷かつ悲惨なシーンの連続です。
同じ国の人間同士で繰り返される略奪・殺戮。反政府組織が強制する、拉致した少年への非道な訓練。「地獄の黙示録」を彷彿とさせるクライマックス間近でのヘリコプターでの銃撃シーンは、まさに生き地獄の様でした。
映画自体はフィクションですが、アフリカで現在も起きている現実が、まったくこの映画と別世界ということは決してないのでしょうね。
今自分が生きている世界とは一見別物の様ですが、自分たちが消費しているモノの先に、この映画のような現実が起きているかも知れません。そういうことをもっと知る事も大事なのではとも思い、考えさせられる映画でした。
★「ブラッド・ダイヤモンド」公式サイト
・ブラッド・ダイヤモンド@映画生活
2007年02月21日
善き人のためのソナタ

1984年の東ドイツ。国家保安省の大尉ヴィースラーは、劇作家ドライマンと舞台女優で恋人のクリスタが反体制である証拠をつかむために、彼らの生活を監視することになります。
しかし盗聴器を通して知る自由・愛・音楽に、いつしかヴィースラーの心に変化が芽生えるのでした…。
1984年…日本はバブル期直前頃でしょうか。そんな時代に、この監視国家って!
第二次世界大戦中の日本もこんな感じだったのでしょうか…?
ごく平和な日常の中で生まれた私には想像がつきません。
普段の生活の中で新聞やTVのニュースについて、家族や友達と自分の主観で話ができることの素晴らしさを痛感させられました。
主演のヴィースラーを演じるウルリッヒ・ミューエの演技が印象的です。
終始無表情といっても良い程に感情を表に出さないのですが、微妙な心の変化が伝わってきます。
盗聴中に聴いたソナタに一筋の涙を流すシーン、ラストの本屋での表情…すごく何気ないのですが、心に強く訴えかけてくる演技でした。
重く悲しいテーマの作品ですが、文化や芸術が人間にもたらす力の強さ、人間が生きていくために必要な自由と尊厳の大切さを深く考えさせてくれた映画でした。
【追記】
この映画は第79回アカデミー賞・外国語映画賞を受賞しました。
★「善き人のためのソナタ」公式サイト
・善き人のためのソナタ@映画生活
2007年02月08日
「ナイロビの蜂」第78回アカデミー賞助演女優賞!

2005年・イギリス映画
監督:フェルナンド・メイレノス
出演:レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ
本年度のアカデミー賞で、「バベル」の菊池凛子は果たしてオスカーを手にする事ができるのでしょうか?!
「ナイロビの蜂」の演技で、レイチェル・ワイズは第78回の助演女優賞の栄冠に輝きました。
妻の死の真相を追っていくうちに浮かび上がってくる、世界的な陰謀。
製薬会社と国の癒着問題をリアルに描いています。
私達が知らない間に、このような怖い出来事は起こっているのでしょうね…。
公開時の宣伝コピー、なんともベタに「愛の傑作!」って書かれてましたが、どうなんでしょう。
シビアなこの映画をメロなラブストーリーと勘違いして、観に来た人も少なくはなかったはず。
日本の宣伝コピーはややオーバーに感じるのですが、やはりどうしてもそこは外せないんでしょうね。
妻に死なれてから夫が初めて妻の隠された面を知り、お互いの愛情をより深く確認するなんて…とても悲しくてやりきれなかったです。
どうして生きているうちにもっと深く関われなかったのでしょうか。
世界でいちばん近い他人なのに!
最も近いからこそ見せない部分があったり、あえて言わない方が良い事も多少あります。
でもこの映画では、お互いに自分の本心を打ち明けて問題に踏み込むべきだったのに、あえてやらなかったという点から、この悲劇の結末へとリンクされていくのですよね。
お互いを尊重してるなんて言い方、私にはキレイ事としか思えません。
けれども人間それぞれ生き方も考え方も違うし、観た人がそれぞれの答を見出す事が大事なのでしょうね。
2007年01月28日
映画監督って何だ!

伊藤敏也脚本・監督の異色作、「映画監督って何だ!」。
「監督は映画の著作権者である」という日本映画監督協会の主張を広く知ってもらうために作られた映画です。
現行の著作権法では、映画の著作権者はその作品に出資した製作者。
そのいきさつや理由を検証するということで、時代劇や再現ドラマ、ドキュメンタリー、インタビューなど様々な手法で説明されています。
また、この映画は日本映画監督協会70周年のイベントでもあって、監督協会の会員が総出演!その数なんと200人だそうです。
あまりの数なので、ギネスブックに申請したらしいです。でも他の映画ではありえない事なので即、却下されたそうです。

なかでも注目は「顔」や「亡国のイージス」などで知られる阪本順治。
なんと時代劇の場面で花魁役で登場!ちゃんとひもで足が開かないように結び、内股で歩く練習をして、役作りに努めたらしいですよ!!
大島渚の写真とタイトルだけで興味を持ち、どんな映画かよくわからないままに観ましたが、映画の著作権が映画監督にはないことを、私も初めて知りました。
確かに、ちょっと変だなあとは思います。絵画や小説などは作者の著作権が認められているのに、映画はダメだなんて。
映画作品の表現等において非難され、責任を問われるのは製作者ではなく、映画監督なのに。
映画全体としては正直、あまり面白いと思えなかった…いろんな手法を用いたのが逆にまわりくどさを感じ、観ていて疲れました。
けれども、会員でもある監督たちへの真摯なインタビューは見応えがありました。
そしてラストカットは大島渚。
実際に「愛のコリーダ」での裁判で被告人として戦った彼の笑顔が、この映画の本質を物語っているようで、感慨深かったです。
・映画監督って何だ!@映画生活








