2008年03月04日
君のためなら千回でも

1970年代のアフガニスタン。兄弟のように育てられた、裕福な家の少年アミールと召使の子供ハッサン。
凧揚げ大会で起きた思いがけない出来事から仲違いになり、離ればなれになってしまいます。
やがてアミールはアメリカへ亡命。作家となり平穏な日々を暮らしますが、ハッサンがタリバンに殺されて息子が連れ去られた事を知り、再び故郷へ向かうのでした。
凧揚げのシーンが印象的!
自分の子ども時代のゆるーい凧揚げとは次元の違う凧の美しさ。相手の凧と格闘して糸を切り合うときのスリルと興奮。
青い空をどこまでも昇っていく凧は、自由と平和のイメージでもあるのでしょう。大人になったアミールが再び足を踏み入れた、激動と混沌の中にある故郷の空はとても暗くて低い…悲しいですね。
アメリカでアフガニスタンの物語の映画を創る事は、とても意味のある事だと思います。
ただ、どうしてもアメリカの視点がつきまとってしまうのは仕方のないことなのかな…。終わり方もなんとなく都合良い気がして、何となく腑に落ちない感がありました。
★「君のためなら千回でも」公式サイト
・君のためなら千回でも@映画生活
2008年02月25日
母べえ

地元のシネコンで観ました。もう公開から随分と日も経つのに、結構な入りです!
劇場後方から見える、お客さんの頭髪はほとんどグレー…。
平日ということもあったのでしょうが…若い人の姿がないのは、とても残念!
これからの日本を生きる人達の為に作られたであろう映画なのに。
自分の思うことや考えを自由に発言できない息苦しさ。
一生懸命生きている人々の、ささやかな人生さえも無惨に奪い取った、戦前の日本の姿。
けれども今、再び日本はこの悪夢のような時代へと戻りつつあるのではないか…そんな危惧感を、監督の山田洋次はスクリーンを通して強く訴えかけます。
主演の吉永小百合。
2007年の映画「夕凪の街 桜の国」で寄せた、「原爆投下はしょうがない」発言を明確に非難した自筆のコメント。有名女優といえども、勇気のいる行動。その思いはこの映画でも充分に表現されています。
吉永さんは、やはり日本で特別な女優ですね。改めて彼女に好感を持ちました。
しかし、この映画で最も力を発揮したのは「山ちゃん」役の浅野忠信!
おそらく彼無しではこの映画は成立できないのではと、実感する程に圧倒的な存在感。
オスカーの赤絨毯も踏むようになった彼ですが、日本映画で活躍する姿も今まで以上に観たいと願います。
★「母べえ」公式サイトへ
・母べえ@映画生活
2007年08月04日
夕凪の街 桜の国

「夕凪の街 桜の国」は、被爆被災者の女性とその姪の物語を並行して描いた作品です。
原爆投下から13年後の広島の街。同僚の青年から愛を告げられても、自分が生き残ったことに負い目を感じ、幸福になってはいけないと思う皆実。
平成19年の東京。家族には内緒で広島への旅に出る父を尾行するうちに、自分の家族のルーツを見つめ直し、祖母や伯母が残した思いを知る七波。
ふたつの時代に生きるふたりの女性の姿が、ごく普通に自然に描かれています。
そこから見えてくるのは家族や恋人への愛情や、何気ない日々の暮らしの尊さ。
そして、そのささやかな幸福を奪い取る戦争への怒りや平和を願う思いが、静かに、けれども強く浮かびあがってくるのでした。
終戦から62年経った今、穏やかで何気ない毎日を、私は当然であるかのように受け止めています。
けれどもその平凡な毎日は、あの戦争で傷ついた多くの人々を決して忘れず、しっかりと未来へ語り継がなければ、続かないでしょう。
ぜひ、ひとりでも多くの方に観てほしい映画です。
★「夕凪の街 桜の国」公式サイト
・夕凪の街 桜の国@映画生活
2007年06月21日
麦の穂をゆらす風

「麦の穂をゆらす風」は、20世紀初頭のアイルランド独立戦争とその後の内戦を舞台に、歴史と運命に翻弄され絆を引き裂かれる兄弟の悲劇を描いた作品です。
この映画を観る前に、少しだけでもアイルランド革命について調べておけば良かったなと思いました。
もちろん知らなくても映画の内容はわかりますが、この映画の意義をもっと深く理解できたんだろうなと…。これからDVDでごらんになる方は公式サイトの解説など読まれたら良いかと思います。
それにしても、とても悲痛な内容の映画でした。私はこの映画を観ながら、今も深刻な状況が続くイラクのことを思い出していました。
人間はどうして、同じ過ちを繰り返すのか、その「憎しみの連鎖」はどうしたら断ち切れるのか…監督のケン・ローチは『映画』という表現で、過去を語ることによって答えを探っているのでしょうね。
決して楽しい内容の映画ではないので、人に薦めるのも躊躇します。でも、世の中のあり方が不透明な今の時代だからこそ、観ると良いのではと思う映画でした。
★「麦の穂をゆらす風」公式サイト
・麦の穂をゆらす風@映画生活
2007年04月11日
ブラックブック

1944年、第二次世界大戦下のオランダ。
家族をナチスに殺されてしまった、若く美しいユダヤ人歌手のラヘル。
復讐のためにレジスタンスとなった彼女は、名前をエリスと変え髪もブロンドに染め、スパイとしてドイツ将校ムンツェに近づきます。
だが彼女は憎むべき敵のはずのムンツェを、次第に愛してしまうのでした…。
「ロボコップ」「氷の微笑」などで知られる、ポール・バーホーベンが、故国オランダで監督。企画から20年以上かかった、渾身の作品です。
最後まで目が離せない展開。壮絶な殺戮・アクション、サスペンスそしてラブ・ストーリーと、てんこ盛りな144分!本当に面白い映画でした。
ナチス・ドイツの物語をこれほどのエンターティメントとして作り上げるなんて、さすがバーホーベンですね!
戦争という極限状態の中で暴かれる、人間本来の姿。
レジスタンス側を違った視点から描いているのも、とても興味深かったです。
ラヘルの「哀しみに終わりはないの?」という言葉に、今も絶えない世界中の争いを思い起こさせて悲しくなりました。
主人公ラヘルを演じる、カリス・ファン・ハウテンが本当に魅力的でした。マレーネ・ディートリッヒを彷彿とさせるクールな容貌の中に、強さと激しさを併せ持ったヒロイン。
これまでのバーホーベン作品の女優とは少し違うニュアンスですが、大胆なヌードやラブシーンもバッチリ披露!の体当たり演技という点では、共通していますね。
★「ブラックブック」公式サイト
・ブラックブック@映画生活
2007年01月07日
硫黄島からの手紙

先に観た友人から、「日本人にとても好意的な作り方で、とても驚いた」と聞いていました。
確かに…!!
私も観ている最中、この映画がクリント・イーストウッドの監督作品ということを忘れていましたよ。
ちゃんと台詞も日本語だし、日本兵の描かれ方が自然で、日本映画を観ているみたい。
加瀬亮の憲兵時代の犬のエピソードや、アメリカ兵の母親からの手紙、泣けた…。
あの目線がイーストウッドらしいなあと、思います。上からではなく、低めの水平線からの視点。父親のような優しさと包容力。
二宮君、等身大の日本兵の青年といった感じがとても良かったです。今までのアメリカの戦争映画では、日本人が国のロボットみたいな描かれ方が否めなかったので、新鮮でした。
助演というより、主演なのではと思うのですが、やはり知名度が渡辺謙が高いからなのかな?
中村獅童の情けなさも人間臭くて良かったです。
この映画の日本での大ヒットはとても嬉しいのですが、この映画を観て感動した人には、もうひとつの「父親たちの星条旗」もぜひ観てほしいところ。
ちゃんとリンクされているんですよね。アメリカと日本の立場からの視点での作り方に、イーストウッドの度量を感じます。
「ダーティーハリー」の頃からファンだったけど、今では尊敬しています。
2006年12月23日
太陽

今日は天皇誕生日ですね。若い頃はあまり皇室に興味を持てなかった私ですが、今では割と特集番組なんか見る事もあります。
映画「太陽」はロシアの映画監督、アレクサンドル・ソクローフが描く、第二次世界大戦後の日本。
昭和天皇を、戦争という悪夢の中で引き裂かれる、ひとりの人間として描き、直面した孤独と苦悩が描かれています。
私が劇場で観た時は、大学生くらいの若い人が結構来ていたのでビックリしました。
昭和育ちの私ですら『昭和』が昔のことのように感じるのだから、平成育ちの子供たちなんて、もう大昔なんだろうな…。
映画館に来ていた若い子達はどう感じたのだろう。そして、天皇を神様と思わされて戦争時代を生きた年代の人達、私の祖父母や父母の世代はこの映画を観たら、どう受け止めるのだろう。
私が天皇の存在を知った時は、既に『普通の人間』として存在していましたが、それでもこの映画を観た時はとまどいを感じ、複雑な気分で映画館を出たのでした…。

イッセー尾形の天皇はよく似ていたと思います。無邪気な子供みたいでした。ちょっと可愛いと思うのは不謹慎かな?
テレビで見た昭和天皇の立ち姿や話すときの仕草を思い起こさせて、懐かしさすらアリで。
でも『都市カタログ』をちょびっと連想させて、クスっと笑ってしまいました。
2006年12月14日
「紙屋悦子の青春」

『紙屋悦子の青春』は、かっての恩師がすごく熱く薦めてくれた映画です。
昭和20年・春。鹿児島の田舎町で兄夫婦と慎ましい生活をおくっていた紙屋悦子。彼女の願いは想いを寄せる兄の後輩、明石少尉の無事。だが、明石は自分の親友永与少尉との縁談成立を望みます。
傷心を押し隠し、悦子は永与との見合いに望むのでした…。
戦死するであろう自分の代わりに、愛する人を守ってほしいと親友に託す明石。残された者同士の悲しみを共有し、結婚を決意する永与と悦子。
とても清々しく、優しい映画なのです。戦争のために引き裂かれてしまった、ささやかな日常の喜びや幸せが体現されています。
でも、私はなんとなく腑に落ちませんでした。どうして悦子はそんなに物わかりよく、明石への想いをぶつけることもなく、永与を受け入れてしまうのか。
それが、昔の日本というもので、今ほどに自分の感情を口にはしなかった時代なのだと言われてしまえばそうかも知れないのですが…。
この映画は今年4月に亡くなった黒木和雄の遺作になります。
戦争を憎み、平和を望んだ映画監督。
原爆投下後の広島を舞台にした前作『父と暮らせば』も素晴らしい作品なので、ぜひDVDで観てもらいたいです。
・紙屋悦子の青春@映画生活







